第93章

島宮奈々未は島宮家を後にし、土砂降りの雨の中、安島若菜に電話をかけた。

安島若菜が車で駆けつけると、雨宿りもせずに道端に座り込んでいる島宮奈々未の姿があった。

「あんた、頭おかしいんじゃないの」

安島若菜は傘をさして駆け寄り、水たまりを大きく跳ね上げた。

島宮奈々未は顔を上げ、安島若菜に向かってふっと微笑んだ。何年も経ってから、安島若菜はあの時の彼女の姿がどれほど悲惨だったかと呆れ交じりに振り返ることになる。

冷たい雨に打たれたことで、島宮奈々未の頭は随分と冴え渡っていた。

車に乗り込むと、安島若菜は慌てて乾いたタオルを探し出し、彼女に押し付けた。「まずは髪を拭いて。風邪引くよ」...

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